2007年03月08日

リベンジ伊是名15~山川シゲ商店~

我々が島でヤギと戯れている時、集落を散策していた長男とFはどうだったか?
伊是名集落をぶらぶら歩いて、伊是名酒造所へ行き、その後山川シゲ商店で1時間半捕まって話していたようだ。その時の様子を長男の手記にて再現したい。


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”古い赤瓦民家がそのまま商店になっている”という山川シゲ商店を探して、伊是名地区を歩いていた。小さい集落だ、ふらふらしていれば見つかるだろう、時間もたっぷりあるし、と。

伊是名酒造所の前をと通って、そのまま交流センターの裏路地を歩く。
ふと石垣の向こうの家の軒下に「米」のブリキの看板がぶら下がっているのが目に入った。これは!と思い民家を入り口から覗くと、二人のおばあさんが縁側に座って話をしている。一人のおばあさんと目が合った。おばあさんが手招きし、縁側に来て座れという。
半分開けた雨戸の向こうに商品ケースがあることを目ざとく確認した。間違いない、山川シゲ商店だ。

縁側に座り、おばあさんと話をする。というより話好きのおばあさんの聞き役をする。
話好きな、頭に手拭をかぶったおばあさんは、カメさんという。あまり話をしないニコニコしているおばあさんが、家の主人の山川シゲさん。

「2,3日留守にしていた。朝から草取りをし、花を植えたりしてたら、くたびれた。店を開けるのもめんどうになった」とシゲさん。
家の前の小さな庭には、きれいに花が植えられ、作業中だったのだろう、掘り返しかけた土やら鍬やらがすみになげてある。
何か一つでも買おうと、さんぴん茶をたのむと「ない」という。店をしばらく開けてなかったので、商品を仕入れていないようだ。
てきとうにケースの中の缶紅茶を買った。「いくらだったかな?」とシゲさん。おいおい。

その後、シゲさんは奥に入り、しばらくしてさんぴん茶をいれた急須を黒糖とチョコレートを持ってきて、飲め、食べろとすすめてくれた。そして「1個しかないけど持っていきなさい」と、島の特産品の「鉄人黒糖」と押し付けてきた。島唯一の港の土産物屋で200円で売ってあるものだ。ありがとう、といただいて縁側に置くと、「忘れないようにカバンにしまいなさい」と言われ、カバンに入れるところまでチェックされた。

一方、カメさんは最初から話しっぱなしである。
「お兄さん、観光ね?」
「どこから?・・・ああ、広島。テレビでよう広島は見るから、よくしっとるさあ」
「私は夏にビーチで店をしとるから、しょっちゅう若い人とはなしをしているさあ。だから、言葉も標準語をしゃべるから意味がわかるよね」
「この島は静かでいいところだよ。でも、若い人はみんな那覇のほうに出て行ってしまう。年寄りばかりになってきたさあ。」
「でもね、老人ホームもあるし、デイサービスもあって、みんなで集まってカラオケしたり、踊りをしたり、楽しいよ。若い頃は朝までカラオケしとったさあ。そこの公民館でもみんなでカラオケしたり、踊ったりしとる」
「他の楽しみは地区ごとの綱引きや、ハーリーや・・・。楽しみはいっぱいある」
「老人会で長野の温泉や、あっちこっちに旅行もする。糸満には慰霊に参りに行く」
「戦争で、役場の人がせんでいいのにむりやり若いのを職場から集めて糸満に送った。みんな死んでしまった」
「今は、島の家もみんなセメント瓦になって、こんな赤瓦は少なくなった。ここも古い家だが、この向こうにも、○×おばあさんの古い家があった。今は木しかのこっとらん」
「この島には高校がないから、みんな那覇の方に進学してしまう。若い人も那覇に家をたてて、年を取ってから帰ってくる。」
「昔は小さな船だたが、今は大きなフェリーで車まで積んで行ってしまう。道路もよくなったから、那覇までいける。子供や親戚もみんな那覇から車で来る」
「この手拭はトーカチ(米寿のこと)のお祝いのときにもらったもの。通りを行列して歩いて、祝の手拭をまいてまわる。そのときにもらったものさあ」

途中、お茶飲め、砂糖かめかめと合いの手を入れつつ、話はエンドレスである。前を通った近所の子供も手招きして呼んでくる。
そのうち、「お兄さん、横浜からだったかね。・・・夏はビーチで・・・カラオケが・・・」と話は二順目になってきた。

そろそろ無人島組が帰ってくるので、お暇を告げると、シゲさんは道まで出てきて、こちらが角をまがるまで手を振って見送ってくれた。
たしか、話し始めたのが10時前。11時半まで1時間半以上、ゆんたくしていた。

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12時前、私と次男は伊是名島に帰ってきた。
Fに電話し山川シゲ商店の場所を聞いた。
伊是名酒造所の前の通りをときわ方面に歩いていったら、レンタサイクルと思われる自転車が止まっていたので、もしかしたら・・と家を覗くと、おばぁ(カメさんの方)が入れ入れと手招きしていた。
入る。どうやらここが山川シゲ商店らしい。

何か買おう。
不覚にも喉が渇いたので発泡酒を選んだ。昼間っから酒飲むやつにろくなやつはいない。

シゲさん「これは、いくらだったかね・・・」
カメさん「あんた、自分の店の商品の値段もわからんかね」

・・・このカメさんは自分の店のように手招きしてたが、ここの店の人じゃないのか。

次男と私「ああ、200円ですよ」
本当は160円だけどまぁいいか。
加えて二人とも千円札しか持ってなかったので、二人で320円だと、お釣りを払う段になるときっといろいろありそうだし。


                                     つづく


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