「この世界の片隅に」
「この世界の片隅に(上中下)」こうの史代著 双葉社
第二次世界大戦中、広島の漁師町に育ち絵を描くことが好きな少女・浦野すずは軍港・呉の高台の町に住み海軍で働く北條周作に嫁ぎ夫婦生活を送っていく……『世界の片隅』の物語
「この作品では、戦時の生活がだらだら続く様子を描く事にしました。」
全体がほのぼのとした描かれかたの中、戦時下の日常の様子、ひとつひとつの描写がとても丁寧に描かれている。そしてどの日常でもあるようなエピソードも、緻密に、一読では気づかないような伏線や表現が散りばめられて成り立っている。
でも戦時下であるからこそ、ひとつ足を踏み外すと闇の部分に踏み入ってしまいどうしようもなくなっていく。
上中巻と読み終え、20年8月に向かって物語が進んでいるのだからと、ある程度の覚悟をして下巻を読んだのだが、想像以上だった。壮絶だった。
そして最後は幸せ(という言葉も違うような不思議なあたたかい感覚)になった。
この作品と出会うことができてほんとによかった。
関連記事